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プロが教える「ブランドを支える経営」~公認会計士・税理士 岡村氏による公開講座~
aeru re-branding
- クライアント
- 奈良市観光経済部産業政策課さん、奈良商工会議所さん
- 業種
- 自治体
- 所在地
- 奈良県奈良市
奈良の工芸を次世代につなぐために発足した「Nara Crafts’ Cross Project」。
本記事では、2023年2月3日に行われた岡村勇毅氏による公開講座の様子をレポートします。
「会計データは経営のコックピットであり羅針盤」
「どんな視点で、金融機関を選ぶべきか?」
「財務諸表では見えない、経営者の情熱・想いも融資のポイント」
など、公認会計士・税理士であり、そして事業主でもある岡村氏ならではの、貴重なお話の連続……!会計・数字への向き合い方が変わる、そんなセミナーの様子をお届けします。
Nara Crafts’ Cross Projectについて
Nara Crafts’ Cross Project とは、“次代の工芸作家のフロントランナーを創出する”をコンセプトに、次代の工芸作家の活躍を多面的に支援するプロジェクト。「伴走支援×公開講座×販路拡大」と3つの切り口から構成されています。
第4弾となる今回の公開講座では、公認会計士・税理士、そしてご自身で事業も手がけられている岡村氏を講師にお迎え。複数の顔を持つユニークな視点から、ブランディングや経営を考える上でのポイントなどをお伝えいただきました。
Nara Crafts’Cross Projectでは、昨今の変化の激しい時代の中でも自分自身のビジョンや戦略を見据え、工芸活動を営む方々に対し、経営やブランディング、マーケティングというアプローチからの多角的な支援を通じて、工芸作品や技術を新たな時代に繋げていくための取組を行います。
講師紹介 岡村 勇毅氏
岡村 勇毅氏 (岡村勇毅公認会計士・税理士事務所 所長)
同志社大学卒業後、監査法人トーマツに入社。 公認会計士資格を取得。上場準備会社から上場会社まで幅広い監査 業務を担当。その後、税理士法人トーマツへ入社し税理士資格を取得。 2012年に独立開業。 2018年にラーメン天下一品 知恩院前店を事業承継し、フランチャイズオーナーとして運営。 ソーシャル企業認証第三者委員会の審査員も務める。
「今」の舵を取るために、外部環境から「未来」を予測する
世代間の価値観の違いを理解する
「ブランドを支える経営」と題した本セミナー。もっぱら会計・数字の勉強になるかと思いきや、まずは「外部環境を知ることから」と岡村氏。
そして、その中でも特に「世代間の価値観の違いを理解することが重要」と説きます。
高度経済成長期の第1世代、「Z世代」と言われる第3世代、その中間に位置する第2世代。
どの世代が良いということではなく、重要なことは「自社ブランドは、一体どの世代に働きかけるのか」ということ。
世代が違えば、価値観=言語が異なる。多様な価値観が混在する現代において、働きかけたい世代に通じる言語で語ることが、商品やサービスを広く知ってもらうための第一歩と言えそうです。
金融機関の動向を押さえる
そして、押さえるべき外部環境として強調されたのが、金融業界の動きです。
金融機関の動向を理解しておくことで、資金調達を有利に運ぶことにつながる、と言います。
具体的には、
「民間、政策公庫、どちらもお付き合いしておくと良い」
「政策公庫との取引があると、有事の際に安心」
など、具体的なアドバイスもいただきました。
また、令和元年に廃止された「金融検査マニュアル」(金融機関担当者が融資可否を判断するチェックリスト)に触れ、「今後の融資基準は、過去ではなく未来を見る方向性になった」とも。
つまり、どんな想いを持って事業を行っているか。
財務諸表では見えない、経営者の情熱・想いも、事業性評価に関わるということ。
だからこそ、「過去ではなく未来の話を聞いてくれる、伴走してくれる金融機関を選ぶことが重要」。
外部環境の動向をキャッチするだけでなく、どんな視点で自らに活かすか。
一歩踏み込んだアドバイスで、縁遠いように感じる情報を自らに引き寄せるヒントもいただきました。
その他、脱炭素や電気自動車、人口減少やDX等々。一見、自身の制作や商売には関係がないと思えることでも、外部環境にアンテナを張り、広く情報をキャッチする。それが、「未来」を予測し「今」の舵を取ることにつながる。公認会計士でありながら事業主でもある岡村氏のお話には、大きな説得力がありました。
「未来」を予測するために、「今」をリアルタイムでつかむ会計
「今」の舵取りをするために、外部環境から「未来」を予測する。
同時に、「今」をリアルタイムでつかむために、会計を体感する重要性をお話しいただきました。
稲盛和夫氏も「会計データは経営のコックピット」と言ったように、会計データは会社を経営(飛行機を操縦)するための羅針盤。
そして、「リアルタイムでつかむことが重要」と説きます。
税理士の先生に会計処理をお任せすると、試算表を見るのは2か月後。しかし、これでは会計を体感することはできません。
「数字を体感すると、未来が分かってくる」
実際に岡村氏が担当された経営者の方は、最初のうちこそ岡村氏に任せていた会計処理も、ご自身で自計化され、リアルタイムに数字をつかめるようになった結果、
「ここまで見えていたら、この先悪くなる訳がない」と言われたそう。
初めは分からずとも、分かってくると好きになる。好きになると体感を得られる。そして、体感すると未来が見える!
国税庁によれば、全法人数の黒字割合は約3割。その内、会計データを指針に経営計画をしている法人では、黒字割合が約6割まで高まる、との調査結果も。
会計を苦手とされる参加者の方にも、勇気づけられる事実として響いているようでした。
プロ会計士の親身な経営指南は、さらに続きます。
「経営計画には、変動損益計算書が不可欠」
損益計算書なら作っているけれど、「変動損益計算書」とは……?
そんな声が聞こえてきそうな会場に、「通常の損益計算書では見えない限界利益が見えるんです」と、間髪入れずに続ける岡村氏。
そして、限界利益が見えることで「未来の計画、試算ができる」とも。
新しい仕掛けが、利益を生むのか赤字を生むのか。
やる・やらないを正しく判断する決定打とも言える、変動損益計算書。その考え方も詳しく解説いただきました。
数字が「使える」とどうなる?成功事例のご紹介
数字を体感することがいかに重要か。会計データを「使える」状態になると、どんな経営判断ができるのか。その成功事例をお話しいただきました。
笹屋昌園のわらび餅
利益確保のためにコストを下げるのではなく、価値を上げる戦略に成功した事例。わらび餅の販売価格は、一般的なわらび餅の市場価格を上回る2,200円。
値決めの方法には、コストプラス、市場価格、ダイナミックプライシングなど様々な考え方がある中で、「業界に左右されない思い切った価格設定も、経営戦略の一つ」と岡村氏。楽天市場の数々のランキングで1位獲得、累計100万個の売上を記録しています。
「人手不足解消のために人材採用」から、「この事業から手を引く」という判断に。
部門別の損益計算書を出したことで、人材投入しようとしていた事業が、実は「やればやるほど赤字になる」という実態が判明。経営者自らが、「この事業を続けるべきでない」という判断に至った事例を紹介いただきました。
その他にも、貸借対照表、資金繰り、在庫の棚卸と洗い替え。連帯保証や保全率についてなど、余すところなく情報提供いただき、息つく間もなく過ぎた2時間でした。
参加者のみなさま、それぞれに異なる事業規模や経営状況の中、持ち帰れる学びが多くあったセミナーとなりました。
岡村氏からのメッセージ
セミナーの最後に、岡村氏から参加者のみなさまへメッセージをいただきました。
「目先のことに囚われず、俯瞰し、将軍のように戦略的経営を」
イーロン・マスクが、車ではなく「動くコンピュータ」を作っていると定義するように、モノを本質的な真理まで捉えること。
そして、外部環境や会計を通して、未来を見ること。
「未来が見えるとビジネスがしやすくなる。そのためにも私自身、色んな人と接し、感性を磨くことを心がけています」
と、熱いメッセージでセミナーは幕を閉じました。
▲岡村氏が経営する天下一品知恩院前店にて
Nara Crafts’ Cross Project 成果発表会を開催!
奈良の工芸を次世代につなぐため、2022年9月に発足した Nara Crafts’ Cross Project。半年間走ってきたプロジェクトも、いよいよ大詰めを迎えます。
行政が主体となり、予めゴールを定めず、対話を通して伴走型のリブランディング支援を行う。全国的に見ても新しいこの取り組みが、どのような実を結んだのか。その成果発表会を、2023年3月14日に開催いたします!
・日時:令和5年3月14日(火曜日)17時~18時半
・場所:BONCHI 4F TEN(奈良県奈良市橋本町3-1もちいどのセンター街内)※オンライン同時開催
当日は、弊社代表の矢島を聞き手に、実際に支援対象となった工芸作家4名をお迎え。リブランディングの内容や成果について、お話いただく内容を予定しております。
成果発表会の様子は、オンラインでもご視聴いただけます。ご興味をお持ちの方は、ぜひご参加くださいませ。
こちらからお申込みいただけます。
“aeru re-branding” に、ご興味をお持ちの方へ
和えるでは、会社やブランドを末長く持続的に継承していきたいと考えていらっしゃる、経営者の皆様のお手伝いをする、“aeru re-branding”事業を進めております。
企業や事業、ブランドの原点に立ち戻り、「自分たちは何のために存在しているのか。」その本質を問い直し改善策を共に考案、現場の実務に落とし込み、未来へつなげるための具体策を提供いたします。
ブレない軸を見つけ出し整え、実際の業務やビジネスモデルを見直すことで、矛盾のない意思決定の早い組織作り、素直なブランド作りを行うことなどの伴走型支援を行っています。
会社やブランドの本質を捉えるために寄り添い、言語化することから、商品開発、ビジネスモデル考案、現場実務への落とし込みまで、様々な角度でお手伝いができる“aeru re-branding”事業へご興味をお持ちの方は、お気軽にこちらまでお問い合わせくださいませ。
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