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産地体験プログラムの企画運営を行いました~織物産業を活かし関係人口を増やす~

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クライアント
京都府与謝野町さん
業種
自治体
規模
139名
所在地
京都府与謝野町

京都府与謝野町商工振興課さんからのご依頼で、織物産地体験プログラム事業の企画・運営を行いました。

今回のご要望は、主に3点でした。

  1. 町外在住者に対して、与謝野町の織物産業への関心を高める体験プログラムを提供したい
  2. 織物産業に興味関心のある層へアプローチしたい
  3. 織物産業を入り口として、与謝野町の関係人口を増やしたい

与謝野町には、300年の歴史を持つ丹後ちりめんという誇るべき伝統産業があります。しかし、丹後ちりめん従事者は年々減っており、後継者不足が深刻化。担い手の確保と人材育成が課題となっています。

不足する担い手の確保と、与謝野町との積極的な関わりを持つ関係人口の増大を目指し、昨年度に引き続き、与謝野町・織物産地体験プログラム事業の企画運営を委託していただきました。

具体的な取り組み内容は下記にまとめましたので、ぜひご覧ください。

この体験プログラムをきっかけとして、与謝野町外からの関わりを生み出すため、オンラインとリアルを組み合わせたイベントを企画設計いたしました。

インターネットさえあれば、距離や時間やお金などあらゆる制約を飛び越えてしまえる今日。オンラインでのイベントは、地域外の方にも「まずは参加してみよう」と気軽に関わってもらえる入口になります。
その上で、「実際に行ってみたい」と思われた方を与謝野町にお連れし、より深く積極的な関わりを演出するため、リアルツアーを開催しました。


▲海の京都・与謝野町

和えるでは、協業する産地や職人さんのもとへ実際に赴き、何度もお話を重ねながら「真に目指すもの」を共有することを大切にしております。
その中で自然と育まれた地域住民の方とのつながりを活かし、参加者の方により積極的な関わりを持っていただけるツアー内容をご提案いたします。

また、一層広く与謝野町との接点を生み出す仕掛けとして、オンラインイベントの様子を後日YouTubeにて配信しました。当日参加が叶わなかった方に観ていただいたり、共感された参加者の方から知人友人へ広めていただいたり、と活用しています。

【開催日程】
 2021年11月:オンライン工房訪問#1 ~臼井織物編~
 2021年12月:オンライン工房訪問#2 ~デザイン橡編~
 2022年1月 :オンライン工房訪問#3 ~江原産業編~
 2022年2月:工房訪問リアルツアーin与謝野町

「オンラインで工房訪問なんてできるの?」「実際に来て、見て、触れてもらわないと伝わらないのでは?」と思われるかもしれません。

和えるのオンラインイベントでは、参加者と産地・職人さんとの交流を大切に考えております。今回のオンラインツアーでも、職人さんによる工房案内や実演の最中、参加者の方にどんどん質問をしていただき、職人さんがそれに答える、という双方向のコミュニケーションをお手伝いいたしました。

また、職⼈の1⽇の過ごし⽅をインタビューするなど、移住を検討されている方が、具体的に働くイメージを持てるような工夫も取り入れました。

【イベントにご参加いただいた方々からの感想】

⽣産地や興味深い製品や、作り⼿をつなぐ、とてもよい⽅法だと感じました。ふつうには訪問できない⼯房を拝⾒できて、新しい素材としてのちりめんを知ることができてよかったです。

進⾏がとても良かったです。職人さんのお話を遮ることなく関連した話題をチャットのコメントからどんどん拾ってご質問いただいて、皆さんと⼀体感を感じて楽しい時間になりました。

参加者が⼀緒にその場にいる雰囲気を味わうことが出来ました。

・仕事がテレワークになり、多拠点で働くというのも、まったくできない環境ではなくなっているので、 ずっと興味を持っていた織物にいつかチャレンジしたいと思っています。ですので、本⽇冒頭に出ておられた⼥性が、ダブルワークで織物をしていると仰っていたので、すごく励みになりました。

実施後のアンケートでは、ご参加いただいた方のおよそ8割が「丹後ちりめんにより興味を持った」、全員の方が「与謝野町に興味を持った、実際に行きたいと思った」と回答くださいました。


▲オンラインツアー実施後アンケート結果

このようなお声をいただき、和える一同、とても嬉しく思っております。

和えるでは、日本の伝統産業を次世代につなぐための取り組みを通して、伝統産業に興味関⼼のある全国のお客さま、暮し手のみなさまとのつながりを育んでおります。

ぜひ、お気軽にお問合せくださいませ。

オンライン工房訪問#1 ~臼井織物編~

第一回目の工房訪問は、臼井織物さんを訪ねました。

まずは工房内の案内からスタート。
画面越しにずらりと並ぶ織機を見て、参加者の方から早速コメントや質問が寄せられます。
「思っていたより近代的!」「機械化が進んでいますね」
「一人の職人さんが何台の織機を見るのですか?」「職人さんの手が必要な工程とは?」

「織機を直すのも職人の重要な仕事」との説明に、「なるほど」「それも職人さんの仕事なのか!知らなかったです」と新たな発見があったようです。

織物工房を初めて見られる参加者の方にも分かりやすいよう、織物が織られる仕組み、そもそも丹後ちりめんとは何か、といった解説も織り交ぜながらの案内となりました。


▲広巾(ひろはば)のちりめんを織ることのできる織機

工房案内のあとは、臼井さんの作品や試作中の新しい取り組みを見せていただくことに。
伝統的な丹後ちりめん、インテリア用に開発された新しいちりめん、そしてレーザーカットを施した斬新なちりめん。次々に見せられる作品に、参加者の皆さんも「触ってみたい!」と興味津々のご様子でした。


▲伝統的な丹後ちりめん(右)とインテリア向け丹後ちりめん(左)


▲レーザーカットを施したちりめん

「スカーフにしてみたい」「この生地でカーテンをつくってほしい」など、こんな風に使ったら面白そうというアイデアも飛び交い、丹後ちりめんをより身近に感じていただけたようです。

臼井織物さんをご訪問した様子は、こちらからご覧いただけます。

オンライン工房訪問#2 ~デザイン橡編~

次にお邪魔したのは、デザイン橡さん。
第一回目とは対照的に、手機織りにこだわりを持たれている織元さんです。

障子から漏れる光の柔らかさが、画面越しに伝わってくるような工房。手機の音が心地よく響くその先に、今まさに作品を織られている女性の姿がありました。

▲手機が並ぶ工房。建築も木工も全て手がけられる豊島さん

早速インタビューさせていただくと、普段は別のお仕事をされながら、好きな時に来て好きなだけ手機を織るスタイルで働かれているそう。
「柔軟なダブルワーク、いいですね」「そんな働き方もできるんですね」と参加者からは共感と好感の声が上がりました。

豊島さんご自身も、建築、木工、織物、そして綿花や藍の栽培と、好きなことや「やりたい!」と思ったことを、とことん追求する姿勢を常に大事にしていらっしゃいます。


▲撚糸に使う機械も豊島さんの手づくり


▲豊島さんが栽培・収穫されたオーガニック綿花

インタビューを通してどんどんと表情が柔らかくなり、「楽しいですよ~!」と笑顔がこぼれる豊島さん。そんな姿に参加者側も「やりたいことを形にされている姿に感動」「ワクワクが伝わってくる!」「“好き”や情熱が道を拓くんですね」と呼応し、画面越しに心が通う場面に和える一同も胸が熱くなりました。

デザイン橡さんをご訪問した様子は、こちらからご覧いただけます。

オンライン工房訪問#3 ~江原産業編~

オンラインツアー、最後の舞台は江原産業さんです。

まずは江原産業さんの原点である、紋紙の説明から始まりました。
織物の設計図である紋紙は、描いた図案を方眼紙に書き換え、それをパンチカードに落とし込むという工程を経てつくられます。

紋紙の存在そのものを知らなかった参加者の方も多く、「図柄が点字のように変換されている?」「すごい作業量。方眼紙に書いた文様をどうやってパンチカードに落とし込むの?」
「パンチカードはデザインごとに作成?どのくらい時間がかかるの?」と、次々と「もっと知りたい!」の声が。

「織物」からイメージされる、生地を織る、糸を撚る、とはまた違う織物産業の一面を感じていただけたのではないかと思います。


▲紋紙制作の第一工程である図案


▲図案を点字に変換


▲点字をパンチカードに刻印してようやく紋紙に

元々は江原紋工所としてスタートした江原産業さん。「産業」と社名を改めた背景には、「織物だけに固執せず、雇用を生み出し地域に貢献できる会社でありたい」という想いがあることも語ってくださいました。

海外へ丹後ちりめんを発信すべく「create ebara」というテキスタイルブランドも立ち上げられたとのお話から、「日本独自の美意識や繊細さはどこから来るのか?」という本質的な話題にまで発展しました。

丹後ちりめんを育んできた、与謝野町の自然の豊かさ自然と共にある暮らしの魅力を、少しでも参加者の方に届けられていたら嬉しく思います。

実はこの第三回、留学先の海外から、高校生の参加がありました。
織物の世界、本当に素晴らしいです。感動のあまり思わず現地の友人にも共有してしまいました!」とのメッセージに、江原さんご自身が大変感動されていました。

江原産業さんをご訪問した様子は、こちらからご覧いただけます。

工房訪問リアルツアーin与謝野町

3度のオンラインイベントを経て、与謝野町でのリアルツアーを開催しました。
感染症対策のため5名限定募集となりましたが、少人数制の利点を活かし、一人ひとりに深く関わっていただける一泊二日を演出いたしました。

【ご参加いただいた方々からの感想】

・丹後・与謝野町の魅⼒を体験し、関⼼が深まりました。前回、⼀度知り合いの⼯場を訪れましたが、 その時学び感じたものと⽐べると、はるかに濃密でコアな部分を体験できた

・織物の製作⼯程や物⾃体の構成についてふわっとしか分かっていなかったのですが、実際に⼯房を⾒たり、⼿機を体験したことで、すごく理解度が⾼まりました

・プライベートでは観光客として、仕事としてはものづくりを通じて今後もつながっていけたら嬉しいと 感じました。

・たくさんの初めての体験がいっぱい詰まった一泊二日、驚きと善き学びに満ちたツアーでした。

ツアー初日は、オンライン訪問した織物工房2軒を訪ね、職人さんの熱量を直に感じていただきました。丹後ちりめんの加工過程を実演いただいたり、天然の藍染めを間近で見せていただいたり。生で見て、触れられる工房に参加者一同も大興奮、時間いっぱいまで職人さんに色々と質問をされていました。

▲丹後ちりめんの精練を実演

夜は里山に佇むお宿へご案内し、織物文化を育んできた与謝野町の自然を満喫いただきました。与謝野出身のホストが手がける地元のお料理は大好評。夕食に合わせてご紹介した、与謝野産ホップのクラフトビールも話題に一役買い、皆さん興味を惹かれていたようです。
翌朝は、手機織り体験を日程に盛り込み、織物の原点を感じていただきました。


▲お宿から見渡せる里山の風景

和えるの取り組みにご興味をお持ちの方へ

和えるの取り組みに興味を持っていただけました方は、是非お気軽にお問合せくださいませ。