CASES
プロが教える「SNSを通したファンづくり」~文筆家 塩谷舞氏による公開講座~
aeru re-branding
- クライアント
- 奈良市観光経済部産業政策課さん、奈良商工会議所さん
- 業種
- 自治体
- 所在地
- 奈良県奈良市
奈良の工芸を次世代につなぐために発足した「Nara Crafts’ Cross Project」。
本記事では、2022年12月15日に行われた塩谷舞氏による公開講座の様子をレポートします。
「Instagramはお店と同じ。いかに魅力的な店構えをつくるか」
「ただのフォロワーではなく『ファン』をつくるには?」
そして講座の最後には、塩谷氏に自身のアカウントを見てもらえるという特別企画を実施!
果たして、塩谷氏をファンにできるのでしょうか?
Nara Crafts’ Cross Projectについて
Nara Crafts’ Cross Project とは、“次代の工芸作家のフロントランナーを創出する”をコンセプトに、次代の工芸作家の活躍を多面的に支援するプロジェクト。「伴走支援×公開講座×販路拡大」と3つの切り口から構成されています。
第3弾となる今回の公開講座では、文筆家の塩谷氏をお迎えしました。単なるフォロワーではなく「ファン」になってもらうためには、SNSをどのように活用すべきか。SNSを通したファンづくりのプロに、今日から使える具体的アドバイスを教えていただきました。
Nara Crafts’Cross Projectでは、昨今の変化の激しい時代の中でも自分自身のビジョンや戦略を見据え、工芸活動を営む方々に対し、経営やブランディング、マーケティングというアプローチからの多角的な支援を通じて、工芸作品や技術を新たな時代に繋げていくための取組を行います。
講師紹介 塩谷舞氏
1988年大阪・千里生まれ。京都市立芸術大学卒業。大学時代にアートマガジンSHAKE ART!を創刊。会社員を経て、2015年より独立。2018年に渡米し、ニューヨークでの生活を経て2021年に帰国。オピニオンメディアmilieuを自主運営。note定期購読マガジン『視点』にてエッセイを更新中。著書に『ここじゃない世界に行きたかった』(文藝春秋)
Instagramは実店舗。最初の15枚はショーウィンドウ。
多様な媒体で独自の視点を発信し、ファンの心を掴み続けている塩谷氏。
そんな塩谷氏は、「Instagramは実店舗と同じ」と例えます。
一方のホームページは無人島で、よっぽどの興味がないと足を運んでもらえないもの。
「まずはInstagramで、お客さんが入りたくなるお店づくりを」
そして「Instagramに表示される最初の15枚がショーウィンドウ」とも。
新鮮な視点と表現に、思わず「なるほど」とうなずく参加者の方も多数。
魅力的なショーウィンドウをつくるには?
「Instagram=実店舗」「最初の15枚=ショーウィンドウ」。
とは言え、魅力的なショーウィンドウにするにはどうしたらいいの?
そんな声が聞こえてきそうな会場に、塩谷氏から具体的なヒントがいくつも飛び出しました。
- 15枚の世界観を統一する
- イベント告知など文字情報の多い画像は、1枚目ではなく2枚目に載せる工夫を。
- 写真の撮り方、編集の仕方
– 水平・垂直を整える
– 思い切り寄るか、思い切り引く
- 世界観を伝えるために、情報ではなく情景を伝える
– 写真は、自分の心の動きを伝えるもの。
– 「私はこういうところに琴線が触れる」=自分が切り取りたい情景を伝えると、世界観が伝わる
店構えを整える=必要な情報を先に置いておく
Instagramは実店舗と同じ。それでも、1対1の接客はできないのがインターネット。
だからこそ、「必要な情報を予め整えておくことが大切」と塩谷氏は強調します。
- そもそも何をやっている人なのか
- どんなお仕事を頼めるのか/頼めないのか
- 過去の展示会の経歴
- オンラインで買える?実店舗は?
- 口コミは?
など、訪れた人が知りたい情報を整えて、先に置いておく。
これが、「Instagramという実店舗の店構え」だと説きます。
会場には実店舗を持つ参加者も多く、塩谷氏の分かりやすい例えは、説得力を持って響いているようでした。
ただのフォロワーではなく「ファン」をつくるには?
常に受け手の目線に立つからこそ、セミナーでも分かりやすいお話しで参加者を惹きつける塩谷氏。
お話は「ファンづくり」という核心に迫っていきます。
フォロワーではなく、ファンになってもらうには……
- 写真だけではなく、文章も大切
- SNSは見る人にとっての気分転換。公向けに発信した「誰か」ではなく、「私」の人となりが伝わるか
- 滞在時間はだいたい2,3秒、長くて2,3分、SNSをきっかけに、YouTubeやホームページ、noteへ誘導する。noteで、ものづくりや自分の生業の背景を語る
(参考)
店構えを整えたその店内に、どんな人のどんな想いがあるのか。何が人の心を捉えるかは、実店舗でもインターネットでも変わらないのかもしれません。
店構え検証!塩谷氏への公開プレゼン
本プロジェクト恒例となった、専門家への公開プレゼン会。
今回も、Instagram専門家に自身のアカウントを見てもらえるという特別企画を実施しました。
奈良団扇・池田含香堂 池田氏
まずは奈良団扇・池田含香堂の池田氏のアカウントを拝見。
「陰と陽の世界観が混在している。どちらかに統一した方がいいかもしれない」
自分に近い世界観を探すツールとして、ピンタレストを活用するのも手、と塩谷氏。
「団扇のような季節商材はどのように発信すべきか」との質問には、
「オフシーズンは発信せず、普段できないコンテンツ作りの時間に充てては」と思い切ったアドバイスもありました。
赤膚焼作家 大塩氏
続いて、赤膚焼作家の大塩氏です。
白をバックに柔らかい色調の作品で揃えた大塩氏のアカウント。
塩谷氏からは、学芸員の視点に立ったフィードバックがありました。
「どんな風景でどんな展示会をしたのかを見てみたいはず」
「作風が変わっても過去の作品を消さない方がいい。見る側は、変化する作家さんなのかどうかを見たい」と、キュレーターの生の声を知っているからこそのコメントも。
赤膚焼作家 菅原氏
続いての菅原氏は、生き物のオブジェを作品に取り入れた作風がユニークな赤膚焼作家。
作品に取り入れる生き物が「猫」か「昆虫」かで、フォロワー数が上がり下がりするのがお悩みとのことでしたが……
「フォロワーが減るということは、好きの純度が上がるということ」と塩谷氏。
むしろポジティブなことと捉えていいようです。
虫かごの中や土や草むらの中で作品を撮ってみたり、本物の中に一つだけ作品を混ぜてみたり。とことん、好きな人に発信する方法でファンを増やすアイデアも挙がりました。
奈良晒・岡井麻布商店 岡井氏
最後は、奈良晒を手がける岡井麻布商店の岡井氏。
麻の黄なりを基調にした岡井氏のアカウントを見て、また一つ、店構えの具体的アドバイスが。
「色は1秒で伝わる自己紹介」
「色の統一感があるとカッコよさが出る」
「ベージュ1枚だと地味でも、集まると迫力が出る。ぜひ今の世界観を全面に押し出してほしい!」と、商品の実物を見て興奮気味の塩谷氏でした。
(参考)塩谷氏 note 「色を制するものはInstagram時代を制す」
質疑応答
白熱の公開プレゼン後も、参加者の方からの質問が次々と飛び交いました。
参加者:同業者と相互にフォローし合うのは効果的か。
塩谷氏:とても効果的!アルゴリズムによって、同業者側のフォロワーにも自身のアカウントが表示されやすくなる。
参加者:更新頻度はどのくらいが理想的?
塩谷氏:自分でルールを決めたらよい。作家アカウントとプライベートアカウントを使い分ける方法もある。
塩谷氏:投稿内容を毎回変えなくてもいい。6パターンくらいのコアメッセージを用意しておき、何度も繰り返し発信するのも一つの手。
塩谷氏:クレームにはヒントがたくさん詰まっている。いただいたご意見をもとにして、メンテナンス情報などをプロフィール欄に追加しておくと、「痒い所に手が届く」アカウントになる。
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