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工芸の未来を明るくする公開講座:これからのクラフト〜過去・現在を紐解き、次代のものづくりについて考える〜

aeru re-branding

クライアント
奈良市観光経済部産業政策課さん、なら工藝館さん
業種
自治体
所在地
奈良県奈良市

奈良の工芸を次世代につなぐために発足した「Nara Crafts’ Cross Project」。
そのプロジェクトの一環として、永田 宙郷氏による公開講座が2023年12月11日に行われました。
企画から運営まで、様々な角度から「ものづくり」や「クラフト」を見つめ、携わってきた永田氏。
参加者を巻き込み、対話を交えながら進行した今回の公開講座は、「クラフト」と「工芸」の過去・現在、そしてこれから歩んでいく未来について、私たち一人ひとりが捉え直す貴重な機会となりました。

Nara Crafts’ Cross Projectについて

Nara Crafts’ Cross Project とは、“次代の工芸作家のフロントランナーを創出する”をコンセプトに、次代の工芸作家の活躍を多面的に支援するプロジェクト。「伴走支援×公開講座×販路拡大」と三つの切り口から構成されています。

Nara Crafts’Cross Projectでは、昨今の変化の激しい時代の中でも自分自身のビジョンや戦略を見据え、工芸活動を営む方々に対し、経営やブランディング、マーケティングというアプローチからの多角的な支援を通じて、工芸作品や技術を新たな時代に繋げていくための取組を行います。
発足2年目となる2023年度の取組みについて、詳細はこちら

講師紹介 永田 宙郷(ながた おきさと)氏

TIMELESS LLC. 代表 / ててて協働組合 共同代表 / DESIGNART 共同発起人
福岡出身。金沢美術大学芸術学専攻を卒業後、美術館やデザイン会社での勤務を経て、2019年にTIMELESSを設立。「ものではなく、ものづくりを作る」を理念に掲げ、地域産業や工芸へのコミットメントと、ものづくりコミュニティとのネットワークを活用し、多くの商品や事業の開発に携わる。2012年より「ててて商談会」を共同主宰し、2016年には「Designart」を共同発起。2021年、海上建築ベンチャー「N-ARK」設立に参画。

世界の潮流における「クラフト」

本講座は、永田氏からの問いかけにより始まりました。

「ビールとクラフトビールの違いは何でしょうか。」

こうした身近なオブジェクトから連想されるのは、造り手のこだわりやストーリー、地域性などが感じられるもの。

ものづくりに限らず様々な分野において、世界的な潮流として、20世紀から21世紀にかけて、いわゆる利益優先・効率重視ではなく、目的やバランス、物事に付随するプロセスやストーリーがより意識されるようになってきています。
そんななかで「クラフト」や「工芸」は元来、それぞれが地域に根付き、造り手のストーリーを伴って発展してきているものであり、つまり、私たちの目指す未来の指針になり得るのではないかと、永田氏は考えます。
世界もクラフトを残し守り、高めることが、新たな価値創造に繋がるのではないかと期待しています。
「クラフトの再興は、未来への移行に貢献できるのでしょうか?」』これが、永田氏からの問いかけです。

「クラフト」「工芸」の本質とは

次に永田氏は、「工芸」の過去の成り立ちと歩みを丁寧に紐解いていきます。

「工芸」とは、明治期に西洋化が進むなかで取り入れられた「美術」と対比される概念として誕生しました。
「美術」が主に西洋において、作家の純粋な表現の結果として生まれ、直接的には何かの役に立たないものであるのに対し、日本に根付く「工芸」とは、目的があって誰かのために美しく機能するものとして、概念化されたのです。
つまり「工芸」や「クラフト」は、何に対して存在するのか、どのような意味を持っていてほしいのか、考えられ続ける運命にあります。

さらに、「工芸」の大きな特徴としては以下が挙げられます。

  • スタートラインが過去にあること
  • 土地から切り離しづらいこと

効率性を重視する大規模な工業でもなく、希少性に価値が見出される、個人の作品としての美術工芸でもなく、「クラフト」「工芸」において大切にされるのは地域経済や人間関係です。
ここに、次世代に期待される価値がある、と永田氏は語ります。

ビジネスとしての可能性

それでは、その良さを活かしつつビジネスで成功する、発展していく「クラフト」「工芸」とはどのようなものなのでしょうか。
それを考える際に永田氏が大切にしているルールでありコツは、今ある工芸を調べつくして因数分解して、その要素のひとつだけを変えてみることです。

例えば、「素材」に注目すると……

▼「素材を置き換える」具体例:昔ながらの干菓子をラムネにする

▼「素材を読み替える」具体例:樺細工をお茶に生まれ変わらせる

また、商品の伝え方や語り方も工夫したい点です。
日本や特定の地域において、その様式や用途は何なのか。他の素材や商品と対比した際、何が特徴なのか。

何を更新するにしても、一度に変えるのではなく、一つひとつ丁寧に変えていくこと。
そして、商品の魅力を伝えたい相手との対話を通じ、求められるポイントに合わせていけば、必然性を伴いながら、新しい価値観を生み出していくことができるのです。

参加者からの声

質疑応答時間のやりとりも手厚く、全体を通じて、聞く側にも常に思考と対話の姿勢が求められた本講座。参加者からは、以下のような声が挙がりました。

  • 工芸の捉え方、考え方の幅が広がって良かった
  • 「工芸」「クラフト」の可能性が大きく広がりました
  • 今後の取り組みにおける意識変化のヒントをいただけた
  • 調べつくして、問題的や改善点を見つけ新たな価値を生み出しているのは凄いと思いました

本講座が、奈良の工芸に携わる多くの方々の刺激となったことは間違いありません。
今後、奈良の工芸がさらに発展していくことを願っています。

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ブレない軸を見つけ出し整え、実際の業務やビジネスモデルを見直すことで、矛盾のない意思決定の早い組織作り、素直なブランド作りを行うことなどの伴走型支援を行っています。

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