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プロが教える「バイヤーが本当に買いたくなるブランド」~method 山田 遊氏による公開講座~
aeru re-branding
- クライアント
- 奈良市観光経済部産業政策課さん、奈良商工会議所さん
- 業種
- 自治体
- 所在地
- 奈良県奈良市
奈良の工芸を次世代につなぐために発足した「Nara Crafts’ Cross Project」。
本記事では、2022年10月13日に行われた山田遊氏による公開講座の様子をレポートします。
「バイヤーに刺さるプレゼンの秘訣とは?」
「そもそも、その価格で売り続けていいの?正しい原価計算、値段設定をできていますか?」
そして講座の最後には、工芸作家の皆様と山田遊氏との公開商談会も行いました。果たしてその結果は……?
Nara Crafts’ Cross Projectについて
Nara Crafts’ Cross Project とは、“次代の工芸作家のフロントランナーを創出する”をコンセプトに、次代の工芸作家の活躍を多面的に支援するプロジェクト。「伴走支援×公開講座×販路拡大」と三つの切り口から構成されています。
第1弾となる今回の公開講座は、プロのバイヤーを講師にお迎えし、自らの作品をどのようにブランディングしていくべきか、そのヒントを得るべく開催されました。
Nara Crafts’Cross Projectでは、昨今の変化の激しい時代の中でも自分自身のビジョンや戦略を見据え、工芸活動を営む方々に対し、経営やブランディング、マーケティングというアプローチからの多角的な支援を通じて、工芸作品や技術を新たな時代に繋げていくための取組を行います。
講師紹介 山田遊氏
東京都出身。 南青山のIDÉE SHOPのバイヤーを経て、2007年、method(メソッド)を立ち上げ、フリーランスのバイヤーとして活動を始める。現在、株式会社メソッド代表取締役、 武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科客員教授、東京ビジネスデザインアワード審査委員長、グッドデザイン賞審査委員。国内外の店づくりを中心に、あらゆるモノにまつわる仕事に携わり、多岐に渡って活動を続ける。
2013年「別冊Discover Japan 暮らしの専門店」が、エイ出版社より発売。
2014年「デザインとセンスで売れる ショップ成功のメソッド」が、誠文堂新光社より発売。
これまでの主な仕事に、国立新美術館ミュージアムショップ「スーベニアフロムトーキョー」、21_21 DESIGN SIGHT「21_21 SHOP」、「GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA」、「made in ピエール・エルメ」、「燕三条 工場の祭典」などがある。
バイヤーに売り込むその前に。その価格で、本当に作り続けていけますか?
国内外の第一線で活躍されているバイヤーの山田氏。
どんな成功の秘訣が飛び出すのか、と場内息を飲むも、山田氏から投げかけられた最初の問いは、とてもシンプルでした。
「適正価格で販売できていますか?」
- 原価計算は価格設定の礎となる部分。製作にかかるすべての費用を、きっちりと計算すること。意外とここがおろそかになっている作り手の方が多い。
- 原価を計算した上で、月にいくつ作ることができるのか。製作数量も決める。
- 「上代=原価+自社利益+販売店舗利益」上代は、正確に原価が算出できて初めて設定できる。
「数字の得手不得手は関係ない。数字でしっかり管理していくことは、モノづくりを継続していく上で必要不可欠。」
多種多様なモノを世の中に送り出してきた山田氏の言葉だからこそ、作り手の皆さまに真っ直ぐに届いているようでした。
▲質疑応答を交えながら進行しました
老舗南蛮菓子屋はなぜアイスクリームを打ち出したか
続いては、山田氏が手がけてきたコンサルティング事例をご紹介。
老舗菓子屋「鶴屋」様の看板商品、「丸房露」のプロデュース秘話を取り上げながらお話しいただきました。鶴屋様の事例は、南蛮菓子の老舗が敢えて洋菓子のアイスクリームを開発・販売したことで100以上のメディアに取り上げられ、結果的に売上が昨対比で123%に。
全くの新商品を打ち出すのではなく、主役の「丸房露」を引き立てる仕掛けが注目を集めました。
▲「丸房露のためのアイスクリーム 佐賀県産 みかん蜜 使用」引用元
しかし山田氏が強調したのはここでも、「基本をしっかり抑える」こと。成功事例は、ドラマティックな結果だけに焦点が当たりがちですが、そこに至るまでには、一歩ずつ基礎を固めていく過程があったと言います。
- まずは予算を設定すること。予算がない=コンパスがないまま彷徨うことと同じ。指し示すものがなければ売上を上げることができない。
- 既存のお客様に訴求すれば、フィードバックが必ずある。お客様のデータベースは管理できているか。
- 看板商品がどのくらい売れているのか、正しく把握する。その上で、今まで以上にエースにするための商品作りを考える。
「数字を見直して、再設定すること。」
「新規開拓を考える前に、既存顧客にアプローチする。今のお客様にまずは応えることが大切」
成功秘話の裏側にあった、地道な改善の積み重ね。一見華々しく見える事例も、山田氏のお話が進むにつれ、自分ごととして捉えている参加者の皆様の姿がありました。
持ち時間は3分! バイヤーに刺さるプレゼンの秘訣とは
いよいよ公開講座も終盤。ここでは、山田氏より「バイヤーとの商談で準備すべきこと」についてお話しいただきました。プロから直接聞けるプレゼンの秘訣に、参加者のメモを取る手にも力が入ります。
- 持ち時間は3分! と思った方が良い。特に展示会場では、バイヤーはとにかく時間がない。
- 限られた時間の中で、語るべき内容
- 自社(産地)
- 商品
- メンテナンス
- 価格
- 取引条件
- 取引先
- 自社・商品説明のコツ 3 STEP
限られた時間の中で、いかにバイヤーに印象付けるか。そのためには、自社・商品、つまり自らを知り尽くし、あらゆる角度で語ることができるか。
山田氏のお話しは、モノづくりに限らず、全ての業界・サービスに通ずる本質ではないか。参加者の皆さまの、うんうんとうなずかれる様子が印象的でした。
実践! 山田氏との公開商談会
プレゼンの秘訣を伝授いただいたところで、早速実践!「オンライン公開商談会」と題し、奈良の工芸作家の皆様から山田氏へ、ご自身の作品を語っていただきました。
▲作品を見る山田氏の目は真剣そのもの
まずは赤膚焼作家・大塩氏によるプレゼンです。「伝統的な赤膚焼とは違うものを作りたいと思った」と語る大塩氏。
乳白色の釉薬や絵付けのイメージが強い赤膚焼とは異なる表情に、山田氏も「赤膚焼のイメージが変わった」「狙いはとても良いと感じる」と呼応されました。
一方で値段については「安すぎる!」「続けられる、適切な価格設定を」とのフィードバックが。「手に取りやすい」は誰の基準なのか。誰に届けたいのか。
照準を絞った上で「手に取りやすい」最大値で設定することが大切と、価格設定の考え方がここでも改めて強調されました。
▲帯締め留め具作家・鳥居氏の作品
着物の帯締めを収納するための、留め具を作られている作家さん。
和装文化が暮らしから遠ざかっている今、「これはどのように使うのですか」「素材は何ですか」等々、商品そのものをバイヤーに理解してもらうところから始まりました。
「ニッチなものだからこそ、届く人へ確実に届けられる方法を、念入りに戦略を立てる必要がある」
また、ニッチであればあるほど値段は下がらない、とも。必ずしも、相場に合った価格設定をする必要はなく、聞く耳・聞かない耳を使い分けることも重要とのフィードバックがありました。
▲赤膚焼作家・菅原氏の作品
生き物が大好きで、ご自身の作風にも取り入れている菅原氏。鹿をモチーフとしたお皿を山田氏にアピールされました。
「面白い。生き物が好きという想いや手先の器用さを、もっと活かしてはどうか」
「道具にこだわらず、例えば動物の置き物を作ってもいいのでは。好きな人は必ずいる(ニーズはある)と思う」
多種多様なモノを見てこられた山田氏からの説得力ある言葉に、菅原氏も背中を押されていた様子でした。
参加者からの感想・コメント
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(公開商談会で)山田氏からのアドバイスを受けて、がらりと作風が変わった。器に具象的な生き物をつけることをやめ、抽象表現に挑戦している。
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原価計算をやったことがなかった。窯の電気代からきちんと確認せねばと思った。お客さまに適正な価格で買っていただき、自分もそれで生活していける事業体制にしていきたい。
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山田氏の「赤膚焼のイメージが変わった」というコメントが印象的だった。プロが持つ赤膚焼の印象は伝統的なデザインなのだと思った。
モノづくりに関わる全ての方へ、公開講座のご案内
SNSやメディアなどの有識者の方との双方向の講座を通じて、工芸のこれからについて考え、学ぶきっかけとなる公開講座を開催いたします。
公開講座は、奈良市内外に関わらず、モノづくりに関わる全ての方に参考にしてもらえる内容となっております。公開講座はオンラインでもご視聴いただけます。ご興味をお持ちの方は、ぜひご参加くださいませ。
こちらからお申込みいただけます。
“aeru re-branding” に、ご興味をお持ちの方へ
和えるでは、会社やブランドを末長く持続的に継承していきたいと考えていらっしゃる、経営者の皆様のお手伝いをする、“aeru re-branding”事業を進めております。
企業や事業、ブランドの原点に立ち戻り、「自分たちは何のために存在しているのか。」その本質を問い直し改善策を共に考案、現場の実務に落とし込み、未来へつなげるための具体策を提供いたします。
ブレない軸を見つけ出し整え、実際の業務やビジネスモデルを見直すことで、矛盾のない意思決定の早い組織作り、素直なブランド作りを行うことなどの伴走型支援を行っています。
会社やブランドの本質を捉えるために寄り添い、言語化することから、商品開発、ビジネスモデル考案、現場実務への落とし込みまで、様々な角度でお手伝いができる“aeru re-branding”事業へご興味をお持ちの方は、お気軽にこちらまでお問い合わせくださいませ。
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