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「ここで働いていることに誇りを持てる企業にしたい」2年間の伴走型リブランディングの振り返り

aeru re-branding

クライアント
東邦工業株式会社さん
業種
製造業
規模
150名
所在地
群馬県安中市

佐賀県庁が展開する伴走型リブランディング支援事業「さが100 年企業計画」事業説明会にて、和えるが伴走型リブランディングをさせていただいている東邦工業株式会社さんとのトークセッションを実施しました。

「伴走型リブランディングを依頼しようと思ったきっかけ」や、「リブランディングを通して生み出したい文化」「生みの苦しみを経て、紡ぎ出した企業理念」とは。2年間におよぶ伴走型リブランディングの軌跡を振り返ったトークセッションの模様をお届けします。伴走型リブランディング事業に関心をお持ちの企業や自治体のみなさまにお読みいただけますと幸いです。

東邦工業株式会社さんについて

1960年に創業。群馬県安中市の本社を構え、製品設計から金型製作、成形・塗装・印刷・組立・検査までプラスチック加工のすべてを一貫して手がける企業です。2020年には三代目として北村章剛専務取締役が代表取締役社長に就任。現在は、「未来を情熱で変えていく」を企業理念とし、プラスチック製造を核としながら、様々な事業展開を行っています。

伴走型リブランディングを始めたきっかけとは

和える 矢島:まずは、和えるに伴走型リブランディングをご依頼してくださったきっかけについて、お教えいただけますでしょうか。

北村氏(東邦工業株式会社 代表取締役):商社での勤務を経た後、当時父親が経営をしていた東邦工業に戻ったのですが、古くから続く体制や環境に危機感を覚えました。ただ一体何から手をつけたらいいのか分からなかった。そんな最中、矢島さんが登壇していた講演でお話されていた「リブランディングの必要性」について深く共感して「お話しをしてみたい」と思ったことがきっかけですね。

和える 矢島:講演を終えてすぐにご連絡をいただきましたよね。とても印象的だったのが「伝統分野の会社ではないけれども、文化を生み出し、大切にしたい」というお言葉でした。とても感銘を受けたのを覚えております。

東邦工業株式会社が生み出したい文化

和える 矢島:私はかねてより、全ての企業が「本来は何かの文化を生み出す役割を担っている」と考えておりましたので、北村さんが製造業を通じて文化を生み出したいと思われている点に、とても共感しました。なぜ会社に文化が必要なのか、またどのような文化を生み出したいと思われているのか、お教えいただけますでしょうか。

北村氏:プラスチック製造業は「斜陽産業」と言われていて、新しい人材確保も難しいのが実態です。ただ、そのような状況でも、現場の社員は一所懸命に働いてくれていました。それを見た時に「社員たちがこの会社で働いていることに誇りを持てる」といった文化を形成したいと思ったのです。

和える 矢島:文化というのは、まずは「経営者の想い」がないと生まれないと思いつつも、それを表層的でなく深く浸透させていくためには、経営者のみではなく、社員さん一人ひとりが実現者として、自身の思考や、行動を少しづつ変容させていくことが大事なのではないかと感じます。

社員の変化や文化の形成を感じた出来事

和える 矢島:伴走型リブランディングを始めてから2年間、様々な改革に取り組まれてきました。少しずつ、社員さんの変化や文化が形成されてきたのではないかと思いますが、具体的な事例とともにご紹介いただけますでしょうか。

北村氏:毎年、1泊2日の社内研修会を行っていたのですが、これまでは、社長からの「示し」に対して、社員は頷くのみの「一方的」な研修が多かったのです。これでは「文化を育めないな」と感じました。その課題感と対策として「映画鑑賞を通じた双方向的研修」を実行してみようと思い、和えるさんにご相談したところ、

「ぜひ、やってみたほうがいい」

「お茶やお菓子を用意することで、心が解け、双方感を促すことができるのではないか」

といったような、自身がやりたいことを尊重してくれるとともに、より鮮明に従業員へ想いが届くような具体的な方法を提案をいただきました。

和える 矢島:「和えるは、社長の背中を一番押す存在でありたい」と思っています。社長は最終決断を行う方ですが、その決断について相談ができる相手は、中々いないのではないかと思うのです。社長であっても、誰かと対話し、ご自身の考えを声に出し、聴いてもらうことで、考えがまとまったり深まったりしますよね。それを実行した結果「やっぱりこれでいいね!」と自分で自分の背中を押してあげられる。それがとても大事な事だと思います。

北村氏:私もこの過程にとても価値を感じています。和えるさんには、私の考えをより鮮明に社員に伝える役割を担っていただいているなと思います。

和える 矢島:ありがとうございます。映画鑑賞において「お茶やお菓子」のご提案は、従来のままだと、社員の方もピシッと背筋を伸ばして硬い雰囲気で映画をご覧になるだろうと感じまして。北村さんが「なぜ映画を見て対話したいのか」という想いを、環境・演出からも伝わるようにと思ったことからご提案させていただきました。

北村氏:そういった細やかなアドバイスもいただきましたよね。

和える 矢島:経営者が意図していても、なかなか従業員に伝わりきらない。内容や言葉を変えるだけではなく、場の雰囲気の作り方など、当日の細やかな点まで共に考える。実はこの些細なことで、費用と時間を費やす大切な研修が、経営者の意図するものになり、1回の投資が2倍にも3倍にも皆さんの未来につながっていくのではないかと思います。「トップに意見しない」「トップが決めたことに従う」というのが、北村さんが最も変えたかった点だったと思いますが、他にも様々な施策に伴走させていただく中で、先代が生み出してきた文化の中から、残すべきものとそうでないものを、北村さんとの対話を通じて取捨選択するお手伝いをさせていただきました。いい意味での柔らかさと、背筋を伸ばすところを兼ね備える東邦工業さんに変容してきた印象を受けています。

生みの苦しみを経て紡ぎ出した企業理念

北村氏:和えるさんにご支援いただいた中で、一番大きかったのは「企業理念の策定」ですかね。「北村さんがやりたいことは、これではないですよね」「北村さんの想いを基に企業理念を作っていきましょうよ」というアドバイスをもらって進められたのは良かったですね。

和える 矢島:「企業理念の策定」が一番の「生みの苦しみ」であり、最も時間を費やしましたが、その後、色々な意思決定がスムーズになっている印象を受けていました。最初は「我々はプラスチック製造業の会社です」と仰っていましたが、今はどのような会社と仰るのでしょうか。

北村氏:今は「未来を情熱で変えていく会社」とさせていただきました。プラスチック製造業だけではなく、システム開発や海外展開、不動産など様々な事業を展開しています。「情熱を傾けて未来を変えていける事業であれば、やったらいいじゃないか」と、具体的に言葉に落とし込めたのは大きな成果だったなと思います。

さが100 年企業計画」も素晴らしいプロジェクトだなと感じてます。100年企業って世の中に少ないじゃないですか。群馬県も100年間同じ事業を続けている会社はとても少ない。調べてみると、温泉事業で300年以上続く会社はありましたけども、我々のようなものづくりの会社は、時代の変化に伴って変容していかなければならないと思いますので、その一歩である、経営者の想いを引き出し、形にしてくれた和えるさんには感謝しています。

和える 矢島:私たちが伴走型リブランディングのスタートで大切にしているのは「企業のワンメッセージを言語化する」ところです。ここに腰を据えて時間と頭を投資できないと、その後、なんだか空回りし続けてしまいます。焦りを持ちつつも、その焦りを乗り越えて、じっくりと考えられた企業さんは、うまくいかれているなと感じています。その点、東邦工業さんはとても真剣に向き合われていらっしゃいます。1回のセッションで出てきた言葉を数日経ってから再度議論してみたり、取引先の企業さんにご意見を伺ってみたり。そしてそれを伝えている時の言葉に嘘偽りがないか、違和感がないか、発信することで従業員さんがどんな変化をしていくか、など。何度も何度も考えてそれでも変わらなかったワンメッセージがこの一言でしたね。

北村氏:そうですね。プラスチック製造業は先代から続いていた事業で、私自身が心底やりたかった事業ではなかったのですよね。ただ、会社には多くの従業員がいて、事業規模も大きい中、自分のやりたいことを見つけ出して、言語化して、体現していくのは、一人だけでは出来ないですし、従業員と話しても「それは社長が決めればいいのではないか」との会話になってしまいますので、和えるさんに潜在的な想いを引き出していただいてありがたく思います。

和える 矢島:ありがとうございます。私達もとても嬉しいです。

伴走型リブランディングに合う企業、合わない企業

和える 矢島:伴走型リブランディングに合う企業さん、合わない企業さんのポイントがございましたらお教えいただけたらと思うのですが、いかがでしょうか。

北村氏:大前提として「今のままでいいと思っている企業」は合わないですよね。これから時代が大きく変化していく中で、「このままじゃいけないと思っているけどその答えが見つからない企業」が合うと思います。事業をされている中で、ぼんやりと将来のビジョン見えているのだけど、形にできてない企業って多いと思うのですよね。その具現化を必要とされている企業は和えるさんに伴走してもらうのが良いと思います。

和える 矢島:私たちは答えを教えるような立場では全くなくて、北村さんが仰ってくださったとおり、あくまで経営者さんの言葉を紐解いて、よりしっくりとくる言葉を特定するお手伝いをさせていただいています。

北村氏:数多のセッションを通して「北村さんのおっしゃりたいことって、ぼうっと生きていてはいけないということですよね」「ぼうっと生きていてはいけないというのは、情熱を持てることを仕事にしたいということですかね」「その情熱を持てる仕事はプラスチック製造業だけでなくてもいいですよね」「では情熱を持ってどうしたいですか」といったように「情熱を持って未来を変えていきたい」という言葉を紡ぎ出すお手伝いをいただきました。

企業理念の決定がもたらした連鎖

和える 矢島:伴走型リブランディングセッションを重ねていく中で、「採用したけれどなんだかしっくりこないことがある」と、北村さんが仰ったことから採用全般の見直しのご提案もさせていただき、プロジェクトが始まりましたね。

北村氏:はい。これまではプラスチック製造業を全面に出した採用活動でしたが、何がしたいのかという間口を広げ、未来を情熱で変えたいと思う人を採用する方針に転換しました。企業理念を定めたことから、採用・プレゼンの仕方など全てが変わってきていまして、良い連鎖に繋がっているのではないかと思います。

和える 矢島:今では、採用の担当社員さんもセッションに入っていただいて、北村さんの想いの背景や思考の過程を共有しながら、採用の入口から浸透を図ってくださっていますね。それによって応募される人材の質感も変容しつつあるところに来ているのかなと感じていました。

北村氏:よく考えれば、今までの企業理念は私がやりたいものではなかったので、今までの企業理念に共感した方と私が合うはずがないですよね。自分の想いを明確にして、それにあった方を採用することで、前に進みやすくなると考えています。

和える 矢島:伴走型リブランディングは、会社のワンメッセージを定めたあと、具体的に行う施策が見えてくるのが特長ですね。今回で言えば、「未来を情熱で変えていく会社」というワンメッセージが定まってから、北村さんが違和感を持っていることを対話形式でお聞きし、見えてきた本質的に変革すべきことの一つが「採用」であったということですね。課題のない企業はありません。でもどの課題から解決していくと、全体の歯車がうまく回り始めるのか、眠っている課題の本質を引き出して、伴走しながら変えていく

これからも引き続き「想い」が社内に巡り浸透していく、まさに文化づくりのお手伝いをさせていただければ嬉しいです。

北村氏:ありがとうございます。

和える 矢島:事業の生産性はどの程度高まったのか、とのご質問をいただいておりますがいかがでしょうか?

北村氏:伴走型リブランディングによって、私自身の想いや、従業員に伝えなけれないけないことが鮮明になり、従業員も私の想いをしっかりと理解してくれました。伴走型リブランディングを始めた当初は年商42億円程だったところ、右肩上がりに業績を伸ばし、現在はおおよそ年商50億円となりました。言語化した想いが社員へ伝わり、めざすところが一つとなる。そして行動が変わり、結果的に生産性や業績が向上したのだと思います。

和える 矢島:北村さんが真摯に向き合い、自信を持って、ご自身の思考をアップデートし、言葉で社員さんにお伝えしてきた努力とご尽力の賜物ではないかと感じています。事業の躍進に少しでも貢献できていれば、和える一同大変嬉しいです。

最後に一言、メッセージをいただけますでしょうか。

北村氏:企業の体質を変えていきたいが、従業員にもパートナーにも相談できずモヤモヤとしている方もいらっしゃると思います。事業を見直す良い機会になると思いますので、伴走型リブランディングをご検討してみてください。

aeru re-brandingに興味をお持ちの方へ

和えるでは、地域の中小企業を対象とした「伴走型リブランディング事業」を行っています。それは、有形文化・無形文化ともに、地域の特色を育んでいるのは、まさしくその地に根付く中小企業であり、「日本の伝統を次世代につなぐためには、中小企業を元気にしていくことが重要」という想いからです。

同一の産業でも、抱える課題は千差万別。和えるの伴走型リブランディング支援では、お一人おひとりとの対話を重ねることによって、会社やブランド、モノづくりの原点に立ち戻り、「自分たちは何のために存在しているのか。」その本質を問い直し改善策を共に考案、未来へつなげるための具体策を提供いたします。

また、各業界からプロの講師を招いた公開講座の設計やイベント企画、メディアへのアプローチなど、様々な角度でお手伝いさせていただくことが可能です。

和えるの伴走型リブランディング支援事業へご興味をお持ちの方は、お気軽にこちらまでお問い合わせくださいませ。