CASES

岡山県井原市の市立幼稚園にて、井原デニムaeru schoolを開催 ~教材開発から先生方への研修・実施まで~

aeru school

クライアント
井原市ひとづくり実行委員会
業種
自治体
所在地
岡山県井原市

岡山県井原市(いばらし)の、井原市ひとづくり実行委員会さんからのご依頼で、6ヶ月間にわたり、市立幼稚園にてaeru schoolの教材開発・指導法研修を行いました。

今回のご要望は、主に下記の3点でした。

  1. 市立幼稚園の先生方の、子どもたちへの関わり方を見つめ直す研修の機会にしたい
  2. 地域の産業を活かして、園児の非認知能力と地域愛(シビックプライド)を育みたい
  3. 小学校への学びにつながるような、独自のプログラムと教材を開発し、市立幼稚園13園の魅力化に取り組みたい

下記に、半年間の具体的な取り組みについての詳細レポートをまとめましたので、ぜひご覧くださいませ。

ご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問合せくださいませ。

題材は地域産業の「井原デニム」
倉敷と尾道の間にある、自然豊かな井原市は、デニム生地の工場やジーンズの縫製・加工工場などが集まる一大産地です。

そんな井原市が生み出した「井原デニム」の魅力を伝えながら、子どもたちをの感性を育みたいという想いで始まった、今回のaeru school。実は、講師としてaeru schoolを運営したのは、幼稚園の先生です。
これまでは和えるのスタッフが講師となり、aeru schoolを開催してきましたが、今回は先生方にaeru schoolの思考法を事前にお伝えし、どのようなワークショップをするのか、何を教材にすることで、子どもたちの”学び”につなげていくのかを共に考えました。

研修から教材開発、aeru schoolの実施とその振り返りまで。
計5ヵ月にわたり、井原市のみなさんとaeru schoolを行った様子をレポートいたします。

「井原デニム」とは?

井原デニムとは、井原市のデニム生地やデニム製品・ブランドなどを指して使われる言葉です。
1970年代には、なんとデニムの国内生産の約7割が、井原市で作られていたとのこと!

▲創業およそ70年の井原デニムの生産工場「クロキ(株)」にて、現役で動く織機。シャカッシャカッ!と小気味よい音を奏でています。

現在は、縫製・加工よりも「デニム生地の産地」として知られており、海外の有名アパレルブランドから生地のオーダーが入るほど、独自性や品質が高いのが特徴です。

井原デニムを用いたaeru schoolって?〜現地を訪ね、教材開発〜

aeru schoolを開催するにあたって、私たちはまず現地を訪問。
工場や美術館、デニムショップのほか、デニムを生かしたホテルなどを視察し、製作工程や歴史を学び、井原市の人たちとのつながりを肌で感じてきました。

▲同上の生産工場「クロキ(株)」にて。

▲織り上げたデニムを巻く、驚くほど大きなロール。

私たちがaeru schoolを通じて育みたいのは、「感じる力・観察する力・言語化する力」=考える力
井原デニムを用いて子どもたちに、そんな力を体感してもらうには…
そんなことを考えながら、職人さんやお店の方々にお話を伺いました。

興味深かったのは、織り上げる際に用いる糸の色。
経糸(たていと)は藍で染められていて、緯糸(よこいと)は白い。
「全てが藍色ではない」
「用いる糸の太さや織機によって、デニムの表情が変化する」

デニムとひとくくりに言っても、多様な表情があることを体感した私たちは、この表情の違いを活かして何か作ることができないか、と考えを膨らませました。

60年代の織機

▲どの織機で織るかによっても、デニムの表情が変化します。こちらは、60年代の織機で織ったもの。

最新モデルの織機

▲こちらは、最新モデルの織機で織ったもの。

ちなみに、経糸と緯糸とで色が異なるのは、井原デニムの生産が始まる前から作られていた、この地域伝統の備中小倉織(びっちゅうこくらおり)とも共通するとのこと。

▲井原駅併設のミュージアムにて、昔ながらの織り機を見学。

▲江戸時代に武士の帯や袴の生地として使われた備中小倉織は、国産デニムのルーツだそう。

私たちは、デニム生地を生産する際に出る糸くずや「捨てミミ」と呼ばれるものにも着目。


通常であれば使いみちがなく捨ててしまう糸くずや捨てミミも、子どもたちにとっては魅力的な教材です。
これらもaeru schoolに取り入れることに決めました。
その後、井原デニムを随所にあしらったホテル「舞鶴楼」や井原駅併設の「井原デニムストア」、体験型デニムショップ「おのはなこ商店」などを視察。

▲井原デニムを貼り合わせたフォトフレームや団扇など。

素材を生かし、暮らしに寄り添うモノをaeru schoolで作るためのアイデアを膨らませました。

いざ教材開発!自分だけのコースターを作ろう

視察を終え、井原デニムの魅力を様々な視点から調査した私たちは、
●井原デニムの表情を楽しめるモノ
●現代の暮らしに寄り添うモノ
●子どもたちの思い出に残るモノ

という3点を大切に、教材を開発!

こうして生まれたのが、井原デニムで作るコースターです。
コースターを作りながら、井原デニムの多様な表情に出逢い、何通りも生まれる組み合わせから想像力を膨らませてほしいと願いました。

▲私たちで試作したコースター。切れ端のほつれを生かしたり、職人さんが製作時に残した手書きのメモをデザインのように残したり…

幼稚園の先生方に研修〜コースター作りを通して、何を伝えよう?〜

現地視察を終えて、井原デニムでコースター作りを行うaeru schoolを実施することに決まりました。
今回の井原市さんからのご依頼は、井原市さんの市立の13の園で、幼稚園の先生方が講師となって、aeru schoolを開催できるように指導とノウハウの移管をしてほしい、というご依頼でした。
そこで、幼稚園の先生方およそ25名に集まっていただき、aeru schoolの研修を7月と8月の2回に分けて行いました。

▲参加してくださったのは、井原市内の全13園の園長先生や主任教諭の方々。他園の先生方との交流も生まれ、多くの意見が出されました。

1回目の研修では、aeru schoolの基本概念・理論、大切にしている想いなどをお伝えし、先生方自身で井原デニムについてどのようなイメージをお持ちなのかや、どんなaeru schoolにしたいかをグループで話し合っていただきました。

▲先生方自身が「何を伝えたいのか」をしっかり考えてくださいました。後ろに映るのはオンラインにて研修の進行をさせていただいた私たち。

2回目の研修では実践!

次に集まっていただいた研修では、実際にコースターを制作!

▲「どんどん自由な発想を広げられるのはデニムならでは!」と先生。

その後、手を動かしながら感じたことや、子どもたちに伝えたいことを書き出していただきながら、グループでディスカッションをしました。

特に意識していただいたのは、「褒めること」について。
私たちは、この「褒めること」がaeru schoolを進める上で講師の大切な役目だと考えています。子どもたちの「感じる力・観察する力・言語化する力」=考える力 を育むには、自己肯定感を高めることが必要です。それを引き出すのが、適確かつ具体的に「褒めること」なのです。

▲事前に、“褒め”のポイントは「褒め言葉を探すのではなく、見たまま・感じたままを伝え、具体的に認めることだ」とお伝えしました。

ディスカッションで出てきた、自分自身が言われて嬉しかった褒め言葉は「それ、いいアイデアですね!」「端を使ったアイデアが面白いね」「丁寧に細かい作業をしていますね」など。
色々な人の感性が分かり、伝え合う喜びを感じたというお声もありました。
隣の人と自分の作品を比べることで「見る力」が生まれ、違いに気づくことで「感じる力」が育まれ、話すことで「自己表現力」が身につくのでは?という意見も。

▲先生方の作品。自由に形を切って組み合わせたものや、井原デニムの豊かな表情を生かしたものなどが生まれました。

そのほか、ディスカッションでは、デニム素材や当日の進行についての気づきも。
例えば…
●デニムの布の柔らかさや硬さを感じられる
●切る方向によってほつれたり、ほつれなかったりと面白い
●思ったように切れないこともあり、根気強さも養われる
●自由度が高く、刺激的
●子どもたちが素材に触れる時間やイメージを膨らませる時間を別日にたっぷりとりたい
●年齢に合わせて、ある程度、形を切ったモノを準備しても良いのでは?

先生方が主体的に参加してくださり、2回の研修を終えた私たちは、当日がますます楽しみになりました。

研修後はaeru school当日に向けて、ブラッシュアップ!

aeru schoolの実施は12月。
夏の研修を終え、私たちは研修で出た先生方の意見を取り入れながら、さらに教材の開発を行いました。

一方、先生方はご自身の園に合わせた指導案を作ってくださり、コースター作りの当日に向けて、様々な取り組みを企画してくださいました。
例えば、綿を育て収穫を行い、どのように糸ができるのかを学んだり、育てた藍で藍染体験をしたりと、井原デニムがどのようにできるのかを子どもたちに伝えてくださいました。

子どもたちが学びを深められるように工夫され、「大人になっても使いたいコースターを」と準備してくださる姿は、とても愛にあふれていました^^

幼稚園にて、aeru schoolを開催!世界に一つの井原デニムコースター

いよいよ当日。参加してくださったのは、木之子幼稚園の5歳の子どもたち。
みなさん、思い思いにコースター作りを始めます。

▲もくもくと集中。

途中、お友達の作品を見て、「こんなのどう?」 「いいね!」とやりとり。
先生方も、子どもたちの作る過程を言葉にして具体的に“褒め”たり、「こんな形もできるね」と、見本から新しいものを生み出すお手伝いをしたり。
異なる色や手触りを体感しながら、様々なコースターが生まれました!

▲うまくボンドが付かなくても、どう仕上げたいか見通しを立てながら、何度もトライ!

最後には、自分だけのコースターを発表し、「家で使うのが楽しみ!」と嬉しそうな笑顔が印象的でした。

▲子どもたちの作品。一つとして同じものはありません。

子どもも、大人も一緒に学ベるaeru school〜最後の研修にて〜

aeru school後に開催した、先生同士での振り返りでは、こんな感想をいただきました!

●子どもから「できた!」という声が聞こえ、やり抜く力につながった。
●作る過程を認めることで、子どもたちの言葉が溢れてきた!褒めることの大切さを体感した。
●「感じる力・観察する力・言語化する力」はデニムに限らず、日常の様々な場面で活かせる考え方であると感じた。
●「知る→興味を持つ→伝えたくなる→人を巻き込む」というサイクルを今後の保育現場でも生かしたい。
●クラスや親子で大きなツリーを作るなど、みんなで考えて「協働できるもの」を井原デニムを使って作ってみたい!
●井原デニムの特徴を知識としてではなく、経験を通して得られた。

aeru schoolを通して、子どもたちの変化を体感したり、新しい気付き・次のアクションにつながる発見を得られたりしたというご意見をいただきました。

aeru schoolにご興味をお持ちの方へ

和えるは、これからも日本の伝統を次世代につなぐため、さまざまなテーマでaeru schoolを企画・実施して参ります。
今回のように、形のないところから、一から生み出していくことも可能ですので、「この素材やテーマでどんなことができるだろう…」と、ご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にこちらよりご連絡いただけますと幸いです。

<他のaeru school開催記事はこちら>
●山形県米沢市で出張型aeru school「よねざわおりであそぼう」を開催しました!
(記事はこちら
●パナソニックセンター大阪にて、aeru schoolを開催しました!
(記事はこちら

▲山形県米沢市にて開催したaeru school

▲パナソニックセンター大阪にて開催したaeru school