2018.08.23

夏休み特別編!京都・与謝野町から届ける工房の音 8月17日放送、FM京都ラジオ「Artisan’s Talk」〜「羽賀織物」三代目の羽賀信彦さん〜

2017年4月より始まった、「α-STATION」FM京都のラジオ番組『Artisan’s Talk』
和える代表の矢島がDJを務めさせていただき、毎週金曜朝6時から、
京都の若手職人さんや伝統を次世代につなぐ取り組みをされている方々などの
お声をお届けしております。

8月10日からは夏休み特別編として、
番組開始から初めて、烏丸四条のスタジオを飛び出し、
丹後ちりめんの産地、京都府与謝野町を訪ねて収録してまいりました!

3年半ほど前から通い始め、
緩やかに与謝野町のみなさまと交流をさせていただいてきた矢島。
先週に引き続き、
ゲストにお招きした「羽賀織物」三代目の羽賀信彦さんともその中で出逢いました。
8月17日の放送では、この地で織物産業が栄えた理由を始め、
羽賀さんが家業を継がれた際の想いや、
今だからこそ抱いていらっしゃる織物産業への夢などを伺いました!

風土と伝統産業〜海が見える京都でちりめんが生まれた理由〜

1952年に創業され、和装に欠かせない白生地を手掛けていらっしゃる「羽賀織物」さん。
江戸から昭和初期にかけて織物業が栄えた
「ちりめん街道」と呼ばれる通りに工房があります。
京都 与謝野町
日本三景の一つ、天橋立からほど近く、
日本海をすぐそこに臨むことができ、実は、「海の見える京都」ともいわれる与謝野町。
丹後ちりめんは、その気候風土だからこそ生まれた産業だと、羽賀さんはおっしゃいます。

先週の放送でも触れてくださった通り、
丹後ちりめんの特長は、絹糸を撚ることで生まれた皺(しぼ)。
たくさん糸をねじることで強度を増すことができ、
丈夫で表情が豊かな生地が生まれるのですが、
その糸を撚る「撚糸(ねんし)」の工程には、高い湿度が必要なのだとか。

日本海側で湿度が高いからこそ、捻ったときに切れにくく、
たくさん撚ることが可能になったそう。
中には、1mの糸の中に4000回ほど撚った糸もあるとのことで、
その地域ならではの気候や風土に支えられ、
伝統産業が生まれているのだと感じました^^

例えば、aeruの『青森県から 津軽塗りの こぼしにくいコップ』
約50もの工程を2ヶ月半ほどかけて作られるのですが、
雪深く、農作業などができない長い冬があったからこそで生まれた技法ともいわれています。

国産の栃(トチ)の木を素地に、漆下地で丈夫な漆器の基礎を作り、
何度も何度も塗り重ねた漆を、平らになめらかに研ぎ出して模様を生み出すという技法が
活かされており、そこにはしんしんと雪が降り続ける長い冬をじっと耐え抜く津軽の人々の
粘り強い気質が現れています。

その地域だからこそ生まれた伝統産業。
縦に長い日本の地理的な条件も、
多種多様な伝統産業や文化が生まれたきっかけの一つだと感じます。
職人さんの技が生まれる背景には、自然とのつながりがあるのですね^^

次世代につなぐために〜閉じていた世界を開く〜

現在、39歳の羽賀さんは27歳のとき、別のお仕事をされていた場所から
与謝野町に戻られ、家業を継ぐことを決意されました。
そのとき、2代目でいらっしゃるお父さまは
仕事として成り立たせる難しい現状を鑑み、
「やめた方がいい」とおっしゃったそう。

それでも、3人兄弟の末っ子として育った羽賀さんは、
お祖父さまが一生懸命立ち上げられた工房を
なんとかして繋いでいきたいという想いで、戻ってこられたとのこと。
「おじいちゃんとの思い出もなくなるような気がして・・・」とおっしゃる優しさと、
「誰かがしないと継続できない。今しかない!」とおっしゃる覚悟の両方を感じました。

着物産業に携わる方々がご高齢になっておられたり、
着物をお召しになる方々が少なくなってきたりと、
産業として厳しい現状にある今、
与謝野町では、「ひらく織」プロジェクトという、新たな取り組みもされています。
産地の技術や課題、繊維の可能性を開くという想いで、
工房見学や工房同士の連携などを積極的に進めておられるそう。
このプロジェクトには、羽賀さんを始め、
与謝野町をこれから担っていく世代が数多く携わっていらっしゃいます。

羽賀さんによると、以前は会社や工房ごとに分かれており、
企業秘密として一切外部の方に工房や技術を見せることはなかったそうで、
産業として閉鎖的だったとのこと。
しかし、与謝野町に来て、一緒に働く人に現場を見てもらいたい、
製品がどのように生まれているのかを伝えていきたいという想いで、
新たなプロジェクトが始まっているのです。

「今は次の世代につないでいく、中間点。
着物の生地を守りながらも、何か違う分野でも知ってもらいたい。
未来に残していきたい。」という、羽賀さんのお言葉がとても印象的でした。

技術を教わるだけではなく、新たな市場を見つけに行くことや、
流通の都合上、価格を上げづらいといった産業構造を変えていくこと。
様々な課題に直面する中で、
矢島も「ある意味、チャンスしかない。ポジティブな取り組みだ」と話しておりましたが、
今後 羽賀織物さんや、丹後ちりめんの産業が
どのようなイノベーションを起こしていくのか、とても楽しみです^^

明日のゲスト

さて、明日8月24日朝6:00からの放送では、
「ひらく織」プロジェクトにも携わっていらっしゃる、
「高美機業場」三代目の高岡徹さんをゲストにお招きします。
どうぞお楽しみに^^

aeru meguro ホストシスター松下

これまでの放送はこちら

◯2018年度のゲスト
●「楽芸工房」西陣織 製糸部門 伝統工芸士の村田紘平さん(前編後編
●桶屋「近藤」 近藤太一さん(前編後編
●京・地張り提灯専門「小嶋商店」の小嶋俊さん(前編後編
※小嶋さんとは、以前、aeru gojoにて、門川大作京都市長と矢島の3名で、
「京都から伝統産業を活性化し、日本全国を元気に」というテーマで鼎談させていただきました。
◯鼎談の様子はこちら
●京友禅ブランド「SOO(ソマル)」代表 日根野孝司さんら4名(前編後編
●京焼・清水焼 絵付け師の田辺桂さん(前編後編
●鳴り物仏具「南條工房」の南條和哉さん(前編後編
●「齋田石材店」代表の5代目、齋田隆朗さん(前編後編
●「弘誠堂」表具師の 田中健太郎さん(前編後編
●陶芸作家の小川文子さん(前編後編
<5週連続 夏休み特別編!京都府与謝野町の工房から>

●「羽賀織物」三代目の羽賀信彦さん(前編

◯2017年度のゲスト
これからの経済を担う京都の若手職人さんたちをはじめ、
経済界の方々や商品を生み出すことや届けることに携わっていらっしゃる方々など。
各回の内容の記事を、こちらよりご覧いただけます。

「Artisan’s Talk」番組詳細

放送局:「α-STATION」 FM京都
放送日時:毎週金曜日 朝6:00-6:25
リクエストメッセージはこちらから。
放送エリア:京都府・大阪府・兵庫県・滋賀県・奈良県の5府県
(FMラジオチューナーを通じてお聴きいただけます)
※なお、パソコンやスマートフォンでラジオが聴ける「radiko.jp」では、
放送から1週間に限り、聴き直すこともできます。
「radiko.jpプレミアム」にご加入いただくと、全国どこでもお聴きいただけます。
全国民放FM52局のラジオ放送を、エリア制限なく聴取できるau公式ラジオアプリ、LISMO WAVEにも対応しております。

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